不動産(リサーチカフェ)

住宅ローン金利は上がるのか?

住宅ローン金利は歴史的な低金利が続いています。特に、変動金利の水準は0.3%程度(2023年8月)になっています。

この大きな要因は日本が2013年以降に黒田前日銀総裁の下で異次元の金融緩和・マイナス金利を導入したことであり、その後長らく住宅ローン金利も超低金利が続いています。 この結果、景気が好転し、住宅ローン金利の低下で住宅が購入し易くなりましたが、一方で資金調達がし易くなって不動産投資が活発になり、首都圏のオフィスビルやマンション価格が高騰してバブルの観があります。不動産経済研究所の「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2023 年 6月」によれば、首都圏新築マンションの平均価格は6,550万円、1 ㎡当り単価は 104.1 万円に達しており、東京 23 区では平均価格が 7,703 万円、1 ㎡当り単価は130.1 万円になっています。

この結果、「勤務する夫とパートの妻or専業主婦」の家庭では、新築マンションを東京で購入するのが困難になってきました。しかし、一方で「夫婦ともに勤務(総合職)」の家庭が増えていて、これら夫婦は合算で年収が1,000万円を超えていて借入余力も大きく、高騰したマンションの購買を支えている2つ目の要因になっています。 それでは、この状況が今後も続くのでしょうか?

2つ目の要因は今後も続きそうですが、1つ目の要因である金融緩和・低金利政策は終焉を迎えつつあります。日銀は2023年7月に長期金利が0.5%を超えることを容認しましたが(イールドカーブ・コントロールの柔軟化)、これにより10年固定ローンの金利が上昇しています。今後もこの方向で金融緩和・低金利政策の是正が進みそうで、やがては短期金利が上昇する局面が訪れると思われ、それによって変動金利型の住宅ローン金利が上昇すると考えられます。

なお、変動金利には5年ルール、125%ルール*があって、金利上昇の激変緩和が図られていますが、その代わり、ローン返済予定時に実際は借入金が残っている可能性もあり注意が必要です。

*5年ルール
変動金利の場合、半年毎に金利の見直しがあるものの、5年間は毎月の返済額が変わらない仕組み。

*125%ルール
金利上昇による返済額変動の場合、たとえ上昇幅が大きい場合であっても、返済額は従来の125%までしか上昇しない仕組み。

相続登記の義務化

現在の登記制度は、「登記は自分の権利を守るための制度であり、登記する義務はない」ルールになっています。しかし、来年4月から「相続した不動産」については、登記が義務化されます。

個人や企業が所有する多くの不動産は所有権の登記がされていて、それにより「自身の所有物である」権利を保全しており、外部からも「誰が所有者なのか」が分かります。しかし一方で、「相続したけれど、欲しくない不動産」の場合、相続登記するのに登録免許税、司法書士の手数料等が必要になり、更に固定資産税が継続課税されるほか、隣地所有者等からの草刈り等の要請も考えられるため、「欲しくない不動産は登記をしないし、管理もしない(出来ない)」ことが目立ってきています。

このような状況に対し2021年に不動産登記法等が改正され、2024年4月に施行される予定ですが、これによって以下のように状況が一変します。

①登記対象:相続・遺贈により相続人が取得した不動産(施行日以前に相続により取得した場合も含む)

②制度内容:自己のために相続の開始があったこと、かつ、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記をすることが義務化される。

③罰則:正当な理由のない申請漏れは、10万円以下の過料に処せられる。 ④特例:3年以内に遺産分割が成立しない場合、各相続人は単独で「相続人申告登記(自分が相続人の一人であることを申告する)」することで、上記の義務を免れることができる。

この改正によって、「登記簿を見ても所有者が分からない」、「活用が必要な不動産を活用できない」問題の解決が進むと考えられます。

相続土地の国庫帰属制度

従来は、不動産を放棄する制度がありませんでした。このため、特に「相続した不要な土地」が放置されることが多く、マスコミで「所有者不明土地が九州全域の面積より広い」と取り上げられたこともありました。しかし、2023年4月から「相続土地国庫帰属法」がスタートしています。
この制度では、

①国に引き取って欲しい土地が所在する都道府県の法務局に国庫帰属の承認申請をします。手数料は土地1筆当たり14,000円です。本制度の開始前に相続により取得していた土地も申請の対象になりますが、対象は「土地」のみです。

②法務局が審査し、承認するか、却下・不承認するかを決めます。

③承認された場合、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付します。

この負担金は(1)宅地、(2)田畑、(3)森林、(4)その他に応じて金額が算定されます。(1)(2)(4)は原則として面積にかかわらず20万円とされていますが、(1)では市街化区域や用途地域が指定されている地域内は別の算定式があり、(2)では市街化区域内農地や農用地区域内の農地等は別の算定式があります。以下のURLからダウンロードしてご確認ください。
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00471.html

④負担金を納付したことにより、この土地は国庫に帰属します。

ただし、モラルハザード防止のために、以下の(1)(2)記載のかなり厳しい要件があります。少なくとも、建物や地下埋設物を撤去し、隣地の境界を明確にしておく必要があります。

(1)却下要件・・・該当すれば却下される。
建物がある土地、担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

(2)不承認要件・・・却下すべきか否かが個別に判断される。
一定の勾配・高さの崖があって、かつ、管理に過分な費用・労力がかかる土地(勾配が30度以上、かつ、高さが5m以上であって、通常の管理に当たり過分な費用又は労力を要する場合)、土地の管理・処分を阻害する有体物が地上・地下にある土地、隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地、その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

相続土地国庫帰属法の要件はかなり厳しいですが、土地の管理放棄を防止する選択肢が広がりました。

道路に面しておれば、必ず家を建てられるの?

自宅を購入する場合、「この更地に自宅を建築できるか?」、「この家を建て替えられるのか?」が最大の判断ポイントになりますね。この建築許可を得るには、この接面道路がポイントになります。 実は、建物を建築するに当たって接しているべき「道路」とは、建築基準法に規定されている「道路」を指し、全ての道がこれに該当する訳ではありませんし、登記簿上の「公衆用道路」と一致している訳でもありません。では、どのような道がこれに該当するのでしょうか? 主なものは、以下の6種類です。

①幅員4m以上の公道
②都市計画法の開発許可・土地区画整理等により築造された幅員が4m以上の道路
③都市計画区域が指定された当時に、既に存在していた幅員が4m以上の道路
④2年以内に都市計画法等により新設、変更が予定されていて、特定行政庁が指定した道路
⑤建築物の敷地にするために幅員4m以上の道を築造し、特定行政庁の指定を受けた道路(位置指定道路)
⑥都市計画区域が指定された当時に、既に建物が立ち並んでいた幅員が4m未満の道路で、特定行政庁が指定した道路(いわゆる「2項道路」)

このうち⑥だけが幅員が4m未満であるため、この道路に接している敷地は、原則として道路の中心線から2m(他方が崖や川の場合はその端から4m)後退した線を道路の境界線とみなし、門扉等を後退させなければなりません。つまり、⑥の道も、接面する敷地上の建物の新築・建替えの度に4mに拡幅され、やがて数十年後(?)に幅員が4mになることが期待されています。

私は昭和48年に不動産の仕事を始めましたが、その当時は「夢のような計画だなあ・・・。」と思っていました。ところが、数年前にその場所を通ってみたら、(全部ではありませんが)建替えによってかなり道路の拡幅が進んでいました。都市計画のスパンは50年、100年ですね。

なお、この建築基準法上の「道路」に接していないと、原則として建築ができなくなりますし、既に建っている建物(既存不適格建築物)を取り壊したら、再び建築ができないことになります。

敷地には2m以上の接道義務があります

建築物の敷地は原則として「道路」に2m以上接しなければなりません。従って、2m未満しか接していない場合は、建築確認を得ることはできません。 では、この接している部分が共有地でもよいのでしょうか?

この場合、この共有者全員の承諾により1軒だけが建築可能になります。実は、この「敷地」とは、「1棟の建物の敷地」を指すのが原則で、1棟の建物ごとにそれぞれが「道路」に2m以上接している必要があります。

よく、邸宅跡が4棟の建売住宅に変わり、奥の2棟のための進入路が付いている光景を見かけますが、この進入路の幅も1棟について2m以上必要なので、幅員4mの進入路になっているはずです。 一度、ご確認ください。